「ニンニク抜きの料理を頼むのが、気配りだと思うかね？ ワトソンくん」 「私は好きなものを食べる方がいいと思いますけどね。あと、名前、ワトソンじゃないです、和田です」 和田は右手を少しだけあげて、すんませーんと声を上げる。 私と和田は昼食を取り…

夜の公園で遊具の中で寝そべっていると、聞き覚えのある足音が聞こえた。 「なんで、ここが分かったのよ」 「お前、なんかあったら、ここに来るだろ？ ガキの頃から、そうだったじゃん」 よーすけは呆れたような、懐かしむような口調で言った。 「子供の頃の…

私は魔法使いなのです。 ほら、魔法使いだから、お花が出せるんだよ！ えっ？ 隠し持ってただけじゃないかって？ ちっ、違うよ。魔法で出したんだよ。 じゃあ、ぴすとるを出せって？ それは危ないから嫌だよ。 うーん、わかった。花火なら見せられるよ。 危…

瞼の裏側にある感情に名前をつけないこと。 景色なんていつも歪んでる、大丈夫。 今夜はいつもよりお月様が大きくて、届かない筈なのに、隣に寄り添そってくれているようだ。 しんみりとした世界で、電車が線路を鳴らし、車はエンジンを回し、私は白い息を吐…